ライナーノーツ・メディア
Liner notes・Media
客演指揮:フィリップ・スパーク氏のメッセージ
ヴィヴィッド・ブラス・トーキョウ(VBT)にはこれまで2回のコンサートに呼んでいただき、今回またご一緒する事が出来ました。大変嬉しい限りです。VBTは、バンドとして独自の境地を持つ、誇るべきさ存在だと私は考えています。
私の国、英国では、金管バンドというと、もっぱらアマチュア演奏家による物と認識されています。それらの演奏は、いつもとても情熱的です。ただ、そうした情熱はある意味、プロの演奏と少し違う物を思わせます。それはどのバンドの演奏も皆、躍動的で、活気にあふれ、真剣そのものできわめて水準も高いのですが、敢えて言うと、その方向性に置いては、明らかにプロと違う点が感じられるのです。
私の目にVBTは、実にユニークな存在に移ります。それは、VBTの演奏が、英国の味わう情熱とまさに同じものを醸し出しながら、プロフェッショナルな演奏家としての「完璧」を追求しているからです。練習から本番まで、それは一貫しています。この姿勢は指揮者をずいぶんと楽にするものです。ましてこのような楽団との競演は、指揮者として、まことに楽しい事です。VBTの演奏は、プロフェッショナルであると同時に際だった楽しさを感じさせてくれます。音楽への愛情を原動力にしている演奏家だけが持ち得る心があふれる演奏です。
これは指揮者の理想型です!!
フィリップ・スパーク
作曲家:フィリップ・スパーク氏による曲目解説/翻訳:小関亨子
ゲールフォース/ピーター・グレイアム
Gaelforce / Peter Graham
アイルランドの民族音楽は、最近、ある意味でルネッサンス期を迎えている。例えば脚光を浴びている“リバーダンス”や“ロード・オブ・ザ・ダンス”などのショーは、様々な媒体向けに――金管バンドもそのひとつであるが――見事な適応を遂げている。
『ゲールフォース』はこの伝統の中で、そうした流れにのっている。3つの古くからのフォークの調べを用いながら、現代のバンドの色合いと多様性を追及した。
まずスリップ・ジグの「ロッキー・ロード・トゥー・ダブリン(ダブリンへのでこぼこ道)」ではコルネットの楽節が展開されている。「ミンストレル・ボーイ(吟遊詩人の少年)」と最後のリール「トス・ザ・フェザーズ(羽を空に投げてみると…)」は、最近になってアイルランドのミュージシャン、ザ・コアーズのおかげで再び人気が上昇している。「ミンストレル・ボーイ」には、聖歌隊的で心地よいコルネットの音色とは対照的なフリューゲル・ホルンのソロが含まれている。一方「トス・ザ・フェザーズ」は、ドラムやコルネット、ユーフォニアムなどが、そして遂にはバンド全体が、言うなれば「はなれ技」を繰り広げる楽曲だ。
〜〜〜〜〜
月とメキシコのはざまにて/フィリップ・スパーク
Between the Moon and Mexico / Philip Sparke
『月とメキシコのはざまに』は、1998年全英ブラスバンド選手権の最終審査の課題として作曲され、初演は10月17日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにて行われた。
曲名に隠された意味は特になく、まさしく、曲のスタイルや型を事前に限定することはないであろうという理由から選択された。作曲家としては、無条件に音楽と向き合いたい、そして仮に既に書かれた内容が唯一の影響材料だった場合に、どのような曲として表現されてくるかを見たいと思ったのである。
その結果、2~3つの音符から完全なメロディに至るまでの様々な音楽的要素が、コンテクストの作用に基づいて重要性を引き受けていくという、一種の音楽的コラージュが誕生した。ある意味、この楽曲は独自に自らを育んでいると言える。
曲は、ホルンの旋法の調べで元気に満ち溢れたバリトンの音域の伴奏と共に始まる。コルネットによる速めの華やかなファンファーレによって空気は様変わりし、ユーフォニアムと低音楽器らによる行列へと移った後に、最初のテンポに戻る。そして随所に散りばめられたオープニング部分のメロディとコルネットのファンファーレの反復へと進んでいく。
乱暴な3連符の和音が次の楽節へのつなぎとなっているが、次の楽節では、互いに対照的な雰囲気を持ついくつもの短いモチーフが挿入され、それぞれ独自に展開しようとするものの展開せずに終わっていく。
バンド全体による盛り上がりの後、トロンボーンが短いメロディを導入する。後にこのメロディが重要な役割を果たすことになる。曲の最初で現れた楽想が次第に洗練されていく中、トロンボーンの調べがこの楽節を締めくくる。
つかの間、オープニングの調べを振り返った後、曲はバリトンとホルンのソロ・パートへと進み、その後より緩やかなこの曲の核心の楽節が始まる。そして民族音楽風のメロディから成るコルネットのソロと表現豊かなホルンの調べが展開する。フリューゲル・ホルンとホルンがコルネットの調べを繰り返し、短いカデンツァの後、曲は速いテンポへと戻る。
新しい楽想が導入されるものの、最初の方で紹介されていたいくつものモチーフが、最終的には旋律豊かな完成した楽想へと熟していくことが少しずつ明らかにされていく。トロンボーンの調べは、バンド全体の祝いのテーマへと発展する。緩やかな中心楽節が、今度はより存在感の大きい形で展開する。オープニングのホルンの調べとコルネットのファンファーレがその存在を主張するが、全体を流れる祝いの雰囲気を蹴散らすことはできず、曲は勝ち誇った空気の中、終わりを迎える。
〜〜〜〜〜
ヴィクトリー・ファンファーレ/フィリップ・スパーク
Victory Fanfare / Philip Sparke
この長いファンファーレは、元々コンサート曲として書かれているが、同様に、勝利をたたえるパレードや祝典などの場にもふさわしい曲だ。
〜〜〜〜〜
作曲家:ヤン・ヴァンデルロースト氏による曲目解説
ヘリオス/ヤン・ヴァンデルロースト(VBT委嘱作品)
Helios/Jan Van der Roost
HELIOSは荘厳なコンサートマーチで、イギリスの豊かなマーチの伝統によりインスピレーションを受けました。最初のセクションに示されたテーマは、活動的で優雅、荘厳さの間でバランスをとっています。
一方トリオでは、ヤン・ヴァンデルローストの他のマーチ作品にも出て来るような叙情的で歌いやすいメロディーです。ですからこのマーチは伝統的な豊かな主題と満ちあふれたハーモニーとが一つになり、奏者や聴衆にとって興味深く、楽しめるものです。
「ヘリオス」はギリシャ神話の太陽の神の名前で、明るく晴れやかな特徴はタイトルが示すとおりです。「日の昇る国」日本から委嘱されたものに相応しいタイトルです。
パイパース2005年7月号に紹介されました。
覇気と誇り
非常に中身の濃い1枚だ。
中低音域のパートが優れた和声感覚を有し、なおかつ機動力も高い団体の持ち味が好ましく発揮されたアルバムとも換言可能か。旋律声部が自己主張するだけの合奏体にありがちな、音色的パレットが常に似たような絵具で埋まった印象とは無縁。メロディーメーカー的な才能にモノをいわせて次々と楽想を繰り返すスパーク一流の筆法は下手すると散漫な様相を呈しかねないのだが、それも杞憂に終わる。16分を超える「月とメキシコ」が弛緩なく再現されるのは、作曲者が指揮台に立っていれば当然の話、といってすむものでもあるまい。同団の委嘱作「ヘリオス」における覇気と誇りをたたえた合奏も耳に残る。
パイパーズ2005年7月号より一部抜粋。


